パートやアルバイトで働く際も、将来の生活の安定を考えると雇用保険の仕組みを理解しておくことはとても重要です。
雇用保険は、退職や失業などの状況で生活を支えるための保険制度であり、長期的にパート勤務を続ける際には加入しておきたいところです。
しかし、状況によって雇用保険を外れてしまう、という方も少なくありません。
この記事では、パートで雇用保険に加入できない場合に生じるデメリットや、未加入の場合の対処法について詳しく解説します。
パートで雇用保険から外れる理由
パートやアルバイトでも、一定の条件を満たしている場合は雇用保険に加入する義務があります
しかし、シフト変更など都合によって勤務状況に変化があると、雇用保険から外れる可能性があります。
パートの雇用保険を外れる理由は以下の通りです。
- 週の労働時間が20時間未満
- 雇用期間の見込みが31日未満
- 雇用保険対象外の人
これらの条件によって、雇用保険から「外れる」ことがあるため、自分の働き方が条件に合っているかを確認しておくことが重要です。
条件を満たさない場合は雇用保険に加入することができません。
そのため、自分が条件を満たしているかどうかをしっかりと確認し、条件を満たしている場合は加入を求めることが大切です。
違反すると事業者側に罰則がある
逆に、雇用保険の加入条件を満たしているのに、事業者が適切に雇用保険への加入手続きを行わない場合、これは法令違反となります。
このような場合、事業者には「6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が課される可能性があります。
この罰則は法律によって定められており、従業員の権利を保護するための重要な措置です。
また、罰則だけでなく、企業の信頼性にも影響を与える可能性があり、雇用者としてもそのリスクを軽視すべきではありません。
従業員が安心して働ける環境を整えるためには、事業者がルールを守り適切に雇用保険に加入させることが不可欠です。
事業者がルールを守ることは従業員の権利を守ることにつながりますので、加入漏れがないようにしましょう。
また、加入手続きを怠ったことで従業員が失業時に受けるべき給付金を受け取れない状況が生じると、労使双方にとって大きな問題となります。
そのため、事業者としては法令に従い、しっかりと手続きを行うことが非常に重要です。
ちなみに、いい加減なパート先に限って、有給が貰えないようなのトラブルも良くある話ですので、しっかりと対処しましょう。
雇用保険のみ加入も可能
社会保険には加入していなくても、雇用保険だけに加入することは可能です。
例えば、社会保険(健康保険や厚生年金)の加入条件を満たしていない場合でも、週20時間以上働いているなら雇用保険には加入できます。
これは特にパート労働者にとって、失業時の支えとなる重要な制度です。
雇用保険に加入していることで、万が一の失業に備えることができ、安心感が得られます。
さらに、雇用保険に加入していることで、職を失った際に求職活動に専念できる時間を確保しやすくなるというメリットもあります。
そのため、たとえ社会保険には加入できない場合でも、雇用保険だけは必ず加入するようにしましょう。
パートの雇用保険を外れるデメリットとは?
失業等給付金を受給できない
雇用保険に加入しない場合の大きなデメリットは、「失業等給付金」が受給できないことです。
失業等給付金には以下の種類があり、これらを受けられないことが生活に大きな影響を与える場合もあります。
- 育児休業給付
- 雇用継続給付
- 就職促進給付
- 教育訓練給付
これらの給付金は、失業や育児、キャリアの再構築など、さまざまな状況で働く人々の生活を支えるための重要な助けとなります。
例えば、育児休業給付は出産や育児の際に収入の減少を補い、生活の安定を図るものであり、雇用継続給付は高齢者が長く働き続けるための支援となります。
また、就職促進給付は失業からの再就職を促すために支給され、教育訓練給付はキャリアアップのために必要なスキルを習得するための費用を一部補助してくれます。
これらの給付金が受けられないことは、将来のリスクに備えることが難しくなることを意味します。
雇用保険に加入していることで、これらの給付金を受け取る権利が保障され、人生の様々な局面で支えとなることができます。
そのため、雇用保険への加入は強く推奨されます。
未加入で失業給付を受給できる?
雇用保険に未加入のままでは、通常、失業給付を受け取ることはできません。
しかし、特別な方法として「2年さかのぼって保険料を支払う」ことで、雇用保険の加入が認められ、失業給付を受給できる可能性があります。
この場合、保険料の納付によって過去に遡って雇用保険の適用を受けることができるため、失業時の経済的な支えとなるのです。
ただし、さかのぼって加入できるのは「過去2年間」のみです。
たとえ10年以上パートとして働いていても、受給できるのは2年間分の加入に限られます。
そのため、過去に働いたすべての期間に対して給付を受け取ることはできない点には注意が必要です。
ですが、ブラック企業などで雇用保険料を天引きされていたにもかかわらず、適切に加入手続きが行われていなかった場合には、2年以上前でもその期間が加入期間として認められることがあります。
この場合はハローワークに相談することが有効で、必要な証拠書類を基に被保険者資格の取得確認を行い、適切な手続きをサポートしてくれるため、不安な点がある場合は必ず相談してみましょう。
また、労働基準監督署にも報告することで事業者に対して必要な指導を行ってもらうことができる場合があります。
これにより、働いていた期間について適切に保護される可能性が高まります。
退職後に雇用保険を加入する手続きの流れ
雇用保険の加入条件を満たしているが、雇用保険未加入のまま退職した場合ではハローワークで「被保険者資格取得の確認請求」を行います。
被保険者資格取得の確認請求は、自分が過去に働いていた期間について雇用保険の対象であったかどうかを確認するための手続きであり、これにより過去の未加入期間も適切に補填される可能性があります。
その後、ハローワークに働いていたことが証明できる給与明細や雇用契約書などを提出します。
具体的には、給与の支払いを受けたことを証明するために給与明細、振込明細、雇用契約書、勤務シフト表などの資料が役立ちます。
雇用保険に加入できるのであれば、保険料を納めるという流れになり、過去に未払いとなっている保険料を遡及して納める必要があります。
通常、ハローワークで相談すると対応してくれるので、手続きや必要な書類について詳しく知りたい場合はハローワークに問い合わせましょう。
ハローワークの窓口では、提出する書類の準備や申請手続きの流れについても丁寧に教えてくれますので、困ったときは積極的に相談することをおすすめします。
こうした手続きを踏むことで、退職後でも雇用保険に加入し、失業給付を受け取る道が開ける可能性が高まります。
代替案:求職者支援制度
どうしても雇用保険に加入できない場合には「求職者支援制度」という制度を利用することがおすすめです。
求職者支援制度は、失業保険を受け取れない方でも職業訓練や生活の支援を受けられる仕組みです。
この制度では、無職で収入が少ない方に対して、職業訓練中に支援金が支給されるほか、訓練を受けながら新しいスキルを身につけて次の仕事を見つけるサポートが提供されます。
職業訓練には、介護、IT、接客など多岐にわたる分野のコースが用意されており、興味のある分野でキャリアアップを目指すことが可能です。
ただし、収入の条件や資産状況などいくつかの条件を満たす必要があります。
また、訓練期間中は一定の出席率を保つ必要があり、訓練に積極的に参加する姿勢が求められます。
このため、条件に合う方には求職者支援制度を利用して新たなスキルを習得し、次の仕事に役立てることを強くおすすめします。
雇用保険を外れた場合のメリットはある?
雇用保険を外れると、保険料の支払いが不要になるため、収入の一部が節約されます。
この節約分は短期的には少し役立つかもしれません。例えば、毎月の出費が減ることで、他の生活費や趣味、緊急の出費に回すことができるという利点があります。
また、収入が非常に限られている方にとっては、保険料を支払わないことで金銭的な負担感が軽減されるというメリットも考えられます。
しかし、雇用保険料の負担額は比較的小さく、一般的には大きな節約にはならないため、この点は大きなメリットとは言えないかもしれません。
また、雇用保険に加入していないことで、失業時の生活の安定を欠くことになり、長期的に見れば不安定さが増すことになります。
結果的に、保険料の支払いを避けた短期的な利益が将来的なリスクを高めてしまう可能性が高いため、総合的にはそれほど有利な選択肢ではないと考えられます。
失業給付を受給する為のルール
失業給付を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険に加入していること
- 被保険者期間が12カ月以上であること
- 失業状態であること(働く意欲はあるが仕事が見つからない状態)
- ハローワークで求職活動を行うこと
- 求職活動の実績を定期的に報告すること
これらの条件を満たすことで初めて失業給付を受給する権利が生じます。
また、失業給付を受給するためには、求職活動を継続的に行うことが求められ、その活動の中で仕事を見つけるための努力を続けることが必要です。
失業中であっても積極的に新しい職を探す意志を示すことで、失業給付を継続的に受け取る資格を維持することができます。
さらに、ハローワークで定期的に面談を受け、就職活動に関するアドバイスをもらうことも求められます。
これらのステップを踏むことで、失業中の生活を支えるための給付金を受け取ることが可能となり、新しい仕事を見つけるまでの期間のサポートを得ることができます。
受け取ることができる金額は?
失業給付のもらえる日数や金額は、離職の理由、年齢、加入期間などによって異なりますので、一概にいくらとは言えません。
例えば、自己都合で退職した場合と会社都合で解雇された場合では、給付開始時期や給付期間に大きな違いが出ることがあります。
自己都合退職の場合、通常、給付開始までに数か月の待機期間が必要ですが、会社都合の場合はすぐに給付が開始されることが一般的です。
また、年齢やこれまでの雇用保険への加入期間によっても給付金の受給可能な日数は変動します。
長く加入している人ほど、受給できる日数が増える傾向があります。
さらに、給付金の金額についても、離職前の給与水準や年齢によって変わるため、個別の状況により異なることが多いです。
給付総額の計算方法
失業手当の給付総額は、基本手当日額に受給可能な日数を掛け合わせることで算出されます。
基本手当日額は、離職前の賃金日額の50%〜80%程度であり、賃金が低い人ほど高い割合で給付が計算される仕組みになっています。賃金日額は、離職前6か月間の平均賃金を基に計算されます。
受給可能な日数は、被保険者としての加入期間や年齢、離職理由によって異なりますまた、年齢が高く加入期間が長いほど、受給可能日数は増加します。
具体的には、20代で加入期間が短い場合は90日程度の受給ですが、50代で20年以上加入していた場合には最大で330日まで受給できることもあります。
失業手当は求職活動を行いながら生活を支えるための給付金であり、その金額と期間は個人の状況によって大きく異なります。
また、以下のサイトにシミュレーションできるサービスがあるので、参考にしてみてもいいでしょう。
受給するまでの流れ
失業給付を受け取るためには、まず離職票が発行される必要があります。
離職票を受け取った後、ハローワークで失業の認定を受け、失業給付の申請手続きを行います。
離職票は退職後に雇用主から受け取る書類であり、これをもとに失業者であることの確認が行われます。
申請の際には、ハローワークで求職者登録を行い、求職活動計画を立てることも必要です。
その後、定期的にハローワークへ通い求職活動の報告を行うことが求められます。
この報告には、求人への応募状況や面接結果などの詳細が含まれ、ハローワークの職員による就職支援の一環として面談が行われることもあります。
また、求職活動が一定の基準を満たしていない場合は、失業給付が停止される可能性もあるため、積極的に活動を続けることが重要です。
失業給付を受けるためには、求職活動に対して前向きな取り組みが必要であり、その取り組みを継続的に報告することが求められます。
雇用保険に加入できない対象者とは?
学生のアルバイト
昼間に大学や専門学校に通う学生は、原則として雇用保険の対象外です。
ただし、卒業見込みである場合や夜間の学校に通っている場合は、雇用保険に加入することが可能です。
また、卒業間近でフルタイムの勤務に移行することが予定されている学生や、夜間に働きながら資格取得を目指している学生も加入の対象となる場合があります。
さらに、アルバイトの時間数や雇用形態によっては特例として雇用保険に加入できる可能性もあるため、詳細については雇用主やハローワークに確認することが重要です。
雇用保険に加入することで、失業時の給付や育児休業給付金を受けることが可能になり、安心して働くことができます。
季節的な労働者(例外あり)
1年のうち4か月以内の雇用契約で働く季節的な労働者は、通常の雇用保険の対象外となりますが「季節労働者向け」の雇用保険が設けられています。
この制度は、例えば農業や観光業など、季節によって雇用が増減する業種で働く人々のために作られたもので、短期間の労働であっても一定の条件を満たす場合には雇用保険の適用を受けることができます。
- 4か月を超える期間を定めて雇用されること
- 1週間の所定労働時間が30時間以上であること
季節労働者向けの雇用保険は、通常の雇用保険と同様に、失業時に一定の給付を受けることができるため、季節的な雇用であっても安定した生活を支えることに役立ちます。
必要に応じて対象となる場合があるため、詳細については雇用者に確認することをおすすめします。
また、雇用保険への加入条件や申請手続きについて不明点がある場合は、ハローワークで相談することも有効です。
公務員や特殊法人に勤める方
国家公務員や地方公務員、特殊法人に属する方は雇用保険の対象外です。
これらの職種の方々は独自の退職制度や失業に対する支援が用意されているため、一般の雇用保険には加入しません。
公務員の場合、例えば「共済組合」などの独自の年金制度や退職手当制度が整備されており、失業した際には一定の生活保障が確保されています。
さらに、地方公務員や特殊法人に勤める職員にも、それぞれ特定の退職金制度や再就職支援制度などが用意されており、雇用保険に依存しなくても安定したセーフティネットが提供されています。
これらの独自制度は、雇用者の公的責任と職務の特殊性に基づいて設計されており、民間企業における雇用保険とは異なる形での支援が行われています。
したがって、公務員や特殊法人職員は一般の雇用保険に加入しなくても、必要な支援を受けることが可能です。
雇用保険に関するよくある疑問を解説
日雇い労働者も加入できる?
日雇労働者についても、一定の要件を満たす場合に加入する義務が生じます。加入条件は以下の通りです。
雇用形態:日ごとの雇用契約で派遣労働を行っている方(30日以内の期間を定めて雇用されている場合も含む)
就職意欲:今後、常用就職を希望している方、またはハローワークが常用就職に対する意識の喚起・支援が可能と判断した方。
これらの条件を満たす場合、ハローワークで「日雇労働被保険者手帳」の交付を受けることができます。
この手帳を持つことで、日雇労働求職者給付金の受給が可能となります。
ただし、同じ派遣会社で週20時間以上の勤務が一定期間継続すると、一般被保険者として雇用保険に加入できる可能性があります。
一般被保険者になると、日雇労働被保険者手帳の交付は行われません。
このように、日雇い労働者は「日雇労働求職者給付金」という給付が設けられています。
日雇い手帳は日雇い労働者が働いた記録を残すためのもので、これを活用して必要な日数を満たした場合に給付金の申請が可能となります。
また、日雇労働求職者給付金は、毎月の働いた日数に応じて変動することがあり、安定した収入が得にくい日雇い労働者にとって非常に重要な支援制度です。
この制度を利用することで、失業時にも最低限の生活を維持するためのサポートを受けることができます。
65歳以上でも加入できる?
今までは65歳以上になると雇用保険に加入することが出来ませんでしたが、現在では「高年齢被保険者」という制度があります。
高年齢被保険者というのは雇用保険と同じ意味であり、この制度により、65歳以降に新たに雇用された方には「高年齢求職者給付金」が提供されることになります。
この特例制度は、高齢者が引き続き働き続けられるように支援することを目的としており、高齢者の雇用促進と安定した生活の確保を目指しています。
高年齢求職者給付金は、再就職を目指す高齢者に対して支援を行うためのものであり、特に生活が不安定になりやすい高齢者の求職活動を支える役割を果たしています。
このように、65歳以上で新たに働きたいと考えている方でも、特例制度を活用することで一定の支援を受けられるため、安心して仕事を続けることが可能です。
パートの雇用保険を外れるデメリットまとめ
パートでも条件を満たせば雇用保険に加入することが求められ、加入することでさまざまな給付金を受け取る権利が得られます。
例えば、失業給付金や育児休業給付金など、雇用保険に加入していることで得られる給付は多岐にわたります。
また、雇用保険に加入していれば、就職促進給付金や教育訓練給付金といったキャリアアップを支援する給付金も受けられるため、働きながらスキルを向上させることにも役立ちます。
これにより、失業した場合でも一定期間は生活費をカバーすることができるため、安心感を得られます。
しかし、パートで雇用保険から外れる理由に該当する場合は、残念ながら雇用保険に加入することができないのです。
未加入のままでいると失業時に大きなデメリットがあり、経済的な支援を受けることができないため、生活が不安定になりやすくなります。
もし雇用保険に加入できない場合は、求職者支援制度など代替手段も検討しましょう。
自分の働き方に合った支援制度を理解し、安心して働く環境を整えることが重要です。
どの制度を利用するにしても、自分の状況に応じて最適な選択を行い、将来に向けた備えをしっかりと整えることが必要です。